⚠️この記事には『ほの暮しの庭』終盤の重大なネタバレが含まれます
この記事では、川にいるオオサンショウウオについて、ストーリー終盤で明らかになる彼ヶ津村の祟り、土地神、怪異の正体にも触れながら考察しています。
未クリアの方は、ストーリーをクリアしてから読むことをおすすめします。
『ほの暮しの庭』を遊んでいて、以前から少し気になっていた生き物がいます。
川の中にいるオオサンショウウオです。


かなり大きいので存在感はあるのですが、魚のように釣れるわけでもなければ、近づいて話しかけることもできません。
何かイベントが始まる様子もなく、ただ川の中にいる。
最初は「彼ヶ津村の自然を表現するための生き物なのかな」くらいに思っていました。
ところがストーリーをクリアして、この村に存在する神様や怪異について分かってくると、
「そういえば、川にいるあのオオサンショウウオは結局何なんだろう?」
という小さな疑問が残りました。
Xでも似たようにオオサンショウウオを気にしている人を見かけて、どうやら気になっていたのは私だけではなかったようです。
そこで現実のオオサンショウウオについて調べてみると、「ハンザキ」と呼ばれてきたこの生き物には、『ほの暮しの庭』を思い出すような伝承が残っていました。
もちろん、これから紹介する伝承が『ほの暮しの庭』の元ネタだと公式に明言されているわけではありません。
この記事は、実際に残されている伝承とゲーム内の描写を見比べながら考えてみた、一プレイヤーとしての考察です。
オオサンショウウオは「ハンザキ」とも呼ばれてきた
オオサンショウウオには、古くから「ハンザキ」という呼び名があります。
岡山県真庭市の湯原には、現在もオオサンショウウオを保護する「はんざきセンター」があり、毎年「はんざき祭り」も行われています。
名前の由来については、
「半分に裂いても生きていそうなほど生命力が強いから」
「大きな口を開くと体が半分に裂けたように見えるから」
など諸説あり、一つに断定できるものではないようです。
今回気になったのは名前そのものよりも、昔の人たちがハンザキを単なる川の生き物とは少し違った存在として語っていることでした。
オオサンショウウオが「淵の主」とされる伝承
特に興味深かったのが、国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」に収録されている岡山県の伝承です。
1973年の記録には、石樋の淵には「主」として大サンショ魚が住むという話が残っています。
さらに、淵へ石を投げ入れて雨乞いをすると、3日のうちに雨が降るとも伝えられていました。
つまり、オオサンショウウオそのものが「淵の主」として扱われていた例があるわけです。
これを知ってから『ほの暮しの庭』の川にいるオオサンショウウオを見ると、
「もしかして、この川の主みたいな存在だったりする?」
と考えたくなってしまいます。
もちろん、ゲーム内でそのような説明はありません。
ただ、神様や怪異が人間の暮らしのすぐ近くに存在する彼ヶ津村だからこそ、普通の農業ゲームでオオサンショウウオを見るのとは少し違った印象を受けます。
「はんざき大明神」の伝説が『ほの暮しの庭』を思わせる
さらに気になったのが、岡山県真庭市・湯原に残る「はんざき大明神」の伝説です。
この地域には、かつて巨大なハンザキが棲んでいたという伝説があります。
三井彦四郎という若者がその大ハンザキを退治したものの、その後、家では夜になると戸を叩く音や泣き叫ぶ声が聞こえるようになり、やがて一家に不幸が続いた。
これをハンザキの祟りだと恐れた人々が祠を建て、はんざき大明神として祀ったと伝えられています。
現在も湯原には「はんざき大明神」の祠があり、この伝説に由来する「はんざき祭り」も続いています。環境省の資料でも、巨大なオオサンショウウオの祟りを鎮めるため祠が建てられたという伝説が紹介されています。
そして、この話を読んでいて気になったのが、
夜に戸を叩く音、泣き声、祟り、祠。
『ほの暮しの庭』を最後まで遊んだ人なら、少し思い当たるものがあるのではないでしょうか。
⚠️ここからストーリー終盤の核心に触れます
以下では、彼ヶ津村の土地神の正体や、リンと怪異の関係について具体的に記載しています。
未クリアの方はここで読むのを止めることをおすすめします。
彼ヶ津村にも「戸を叩く音」「泣き声」「祠」がある
『ほの暮しの庭』では、深夜になると昼間とはまったく違う出来事が起こります。
私自身プレイしていて印象に残っているのが、戸を叩くような音や、赤ちゃんの泣き声のようなものが聞こえてくる怪異現象です。
また、主人公の庭から少し外へ出たところには祠もあります。
はんざき大明神の伝説と並べると、
「巨大なハンザキを退治する」
→「夜に戸を叩く音や泣き声がする」
→「祟りとして恐れられる」
→「祠を建てて祀る」
という要素の中に、『ほの暮しの庭』を思わせるものがあります。
もちろん、これだけで「はんざき大明神の伝説がゲームの元ネタになっている」と判断することはできません。
日本の怪異譚や民間信仰では珍しくない要素が重なっているだけ、という可能性もあります。
それでも、
川にオオサンショウウオがいる村で、深夜には戸を叩く音や泣き声が聞こえ、近くには祠もある。
ハンザキの伝承を知った後では、どうしても少し気になってしまいます。
でも、オオサンショウウオが村の祟りの元凶ではないと思う
ここまで読むと、
「じゃあ、川のオオサンショウウオが彼ヶ津村の祟りと関係しているのでは?」
とも考えられそうです。
ただ、ストーリーを最後まで遊んでいると、私はそこまでは考えにくいと思っています。
彼ヶ津村の祟りについては、本編でその背景が明らかになるからです。
村を神話の時代から守り続けてきた土地神。
その正体は、巨大な桃の木でした。
彼ヶ津村で起きていた祟りを考えるうえで中心にいるのはこちらであり、少なくとも本編を見る限り、川のオオサンショウウオが村で起きていた祟りの元凶だったと考えるのは無理があります。
なので、
「ハンザキの伝承と似ている=オオサンショウウオが彼ヶ津村を祟っている」
とは私は考えていません。
リンが呼んだ来訪神とも違う気がする
終盤では、ヅ主をはじめとした一見恐ろしく見える存在についても、その立ち位置が明らかになります。
リンは村を守るため、来訪神を呼んでいました。
『ほの暮しの庭』では、見た目が恐ろしいから敵、怪異だから人間に害を与える存在、とは限らないんですよね。
では、川のオオサンショウウオも来訪神なのか。
これについても、今のところ私は少し違うように感じています。
少なくとも私がプレイした範囲では、オオサンショウウオとリンを結びつける描写は確認できませんでした。
ヅ主たちと同じように、村を守るために呼ばれた存在だと考える材料もありません。
そうなると、
祟りの元凶ではなさそう。
来訪神だとする根拠もない。
結局、あのオオサンショウウオが何者なのかは分からないままです。
ただの環境生物? それとも彼ヶ津村の「川の主」?
一番単純な答えは、やっぱりただのオオサンショウウオなのかもしれません。
彼ヶ津村の豊かな自然を表現するために配置された環境生物で、それ以上の意味はない可能性も十分あります。
ただ、現実の日本ではオオサンショウウオが「ハンザキ」と呼ばれ、「淵の主」として語られた伝承があります。
別の土地では、巨大なハンザキが祟る存在となり、最後には大明神として祀られました。
そして『ほの暮しの庭』には、川を泳ぐオオサンショウウオがいる。
ゲームと伝承につながりがあると示す公式情報は、私が確認した範囲では見つかりませんでした。
だから、「ハンザキ伝承をモチーフにしたキャラクターだ」と断定することはできません。
それでも、村の大きな謎を知ったクリア後に改めて彼ヶ津村を歩いていると、
「そういえば、あいつは結局何だったんだ?」
と、こういう小さな謎が気になってきます。
何の設定もない普通の生き物なのか。
昔からこの川に棲み続けている「主」のような存在なのか。
あるいは、開発側が日本に残る怪異や民間伝承を意識して、ひっそり配置した生き物なのか。
今のところ答えは分かりません。
でも、ハンザキにまつわる伝承を知ったことで、私には以前より少しだけ意味深な存在に見えるようになりました。
次に彼ヶ津村の川で見かけたら、
「本当にただのオオサンショウウオか?」
と疑いながら眺めてしまいそうです。

